「城」と聞いて、皆さんはどのような景色を思い浮かべるでしょうか？
荘厳な天守閣がそびえる、歴史を感じさせる場所かもしれません。
かつては全国に数百の天守閣が存在していましたが、現在はたった12の天守閣のみが残っています。
この驚くべき変遷をご存知でしょうか？
時代とともに多くの城が失われ、現存する天守閣はなぜ残っているのか、また、それらを守り続ける背後にある情熱について考えてみましょう。
この記事では、現存する12の天守閣が経てきた劇的な歴史を深掘りし、見えない物語を明らかにします。
城ファンだけでなく、歴史に興味のある方々にも新たな発見があるでしょう。
天守閣減少の背後にある幕府の政策
まず、「現存天守閣」とは何かを説明しましょう。
これは、江戸時代に建設され、その後も修復を重ね現在に至る天守閣のことを指します。
今日、日本に残るのはわずか12基です。
江戸時代には数百の天守閣が築かれましたが、徳川幕府が施行した「一国一城令」と「武家諸法度」により、大名はただ一つの城を保有することのみが許されました。
この政策によって、かつて全国に約3000あった城がわずか170程度に激減しました。
この幕府の方針が天守閣の数を劇的に減少させる原因となったのです。
明治時代の廃城令とその影響
江戸時代から生き残った多くの城が、明治時代に新たな試練に直面しました。
1873年（明治6年）に施行された廃城令により、不要とされた城は次々に解体されていきました。
天守閣も例外ではなく、多くが低価格で売却されるか、完全に取り壊されました。
特に、現在は国宝とされる松江城がわずか180円、姫路城が23円50銭で売却されたことは注目に値します。
これらの金額は、当時の米10俵と同等の価値に過ぎなかったのです。
象徴的な城がこれほどの安価で取引されたことは、驚きに値します。
天守を守った人々の努力
すべての天守閣が簡単に消え去ったわけではありません。
いくつかの城は、その芸術的及び建築的価値を理解した人々によって救われました。
特に、姫路城と名古屋城は、陸軍大佐である中村重遠の熱心な訴えにより保護が決定されました。
また、明治天皇が彦根城を訪れた際には、大隈重信が保存を奏上し、天皇の勅命によって城が保存されることになりました。
このように、歴史の転換期において、個人の積極的な行動が城の運命を大きく左右したのです。
地域住民の協力が天守閣保存に果たす役割
地元住民やボランティアの力が、多くの天守閣の保存に大きく貢献しています。
たとえば、松本城では民権運動家の市川量造が資金を集め、天守を購入し、地元の協力を得て修復が進められました。
犬山城、備中松山城、丸亀城なども地元の支援により保存が実現しました。
特に備中松山城では、地元の学生や子どもたちが山頂まで瓦を運んで修復に協力したというエピソードが残っています。
各天守の独自の歴史と保存への努力
現存する12の天守閣はそれぞれ独自の歴史とドラマを持っています。
例えば、福井県の丸岡城は地元の住民によって購入され、町に寄贈されました。
愛知県の犬山城は修復後、旧藩主に譲渡され、長期間にわたって個人の所有となっていました。
備中松山城や丸亀城も、地元住民の尽力によってその姿を保ち続けています。
これらの天守閣は、単なる建造物としての価値だけでなく、地域コミュニティの愛と努力によって形成された文化遺産でもあります。
訪問する際は、それぞれの背後にある物語にも注意を向けてみてください。
それぞれの天守が辿ってきた道を知ることで、より一層の感動を得ることができるでしょう。
まとめ
本記事を通じて、わずか12基にまで減少した天守閣の現状と、その背後にある多層的な歴史を見ることができました。
江戸時代の政策から明治政府の廃城令、さらには地域住民や個々の努力による保存活動まで、様々な要因が天守閣の運命を形作ってきたことが明らかになりました。
これらの城郭が今日まで残ることができたのは、単なる偶然ではなく、多くの人々の情熱と努力の結果です。
歴史的価値を超えて、これらの天守閣は地域のアイデンティティとプライドを象徴し、訪れる者に深い感動を提供します。
天守閣それぞれが持つ独自の物語に耳を傾けることで、私たちは日本の城郭の豊かな歴史と文化をより深く理解することができるでしょう。
